幼かった頃の遊びを思い返すと、必ずと言っていいいほど何かを描いていた光景が浮かび上がってくるという人は多いのではないでしょうか。私はよく落書きをしていました。今思えば絵が好きとか嫌いとかではなくて、無地のスペースがあると何かを無意識に描きたくなっていたような気がします。
私は、今でも絵を描いてみたいと思うことが有ります。そんな時は、「何を題材にしようか」と思いを巡らせて決める場合と、興味深い人物や風景、物や心に感じた情景、頭の中に思い浮かんだものなど、「この題材を描きたい」と決めてから始める事もあります。
ですが、始めてもなかなか思うように筆が進まず、描いては消しの繰り返しで時間だけがすぎてしまい、結局途中でやめてしまうことも多くありました。
原因は、興味を持って観察や想像が出来ていなかった事、練習不足による持続力の低下ではないかと思います。
良いセンスと画材を持ち、実物を見ながら取り組める時間と環境があって表現できることが出来ればどんなに素晴らしいかと思いますが、日々忙しく様々な情報があふれ、いろんな思いや考え事が絶えない中で始める事はなかなか難しいものです。
とは言っても、何時でも身近に紙と鉛筆があれば気軽に始めることが出来ます。何事にも囚われることなく、自由に、せめてひと時でも落ち着いて自分に向き合う事ができ、リフレッシュしてまた忙しい日常へ戻って行ける趣味として、絵を描くということは最適ではないかと思います。
気軽に始められると簡単に言っても暇なときに直ぐ描き始められることは少なく、描く人のその時の状態や対象物によって変わってくると思うので、興味がある物であればよくよく観察してから始めるのが一番です。個人差はあると思いますが、時間がかかってもオリジナルの作品を描くことはいろんな意味で自信が持ててきます。
上手い絵が描けることに越したことはありませんし、基礎の習得は絵に限らず大切な事です。
しかし、自分が自由に描く人の1枚の絵に上手い下手は関係ないと思います。
若い頃、好きな画家の展覧会があると見に行き、全ての作品の魅力や迫力に感動しながらも、いつも感じていたことは個性あふれる作品が印象に残ったということです。
もし描きたい物やイメージがあるのならば、それはとても貴重な事で、何かと忙しいこのご時世ですが自身の中で焦らずに大切に育んで行き、表現できる時が来たら思い切って鉛筆とスケッチブックを持ってきて描いてみると意外と筆が進みスッキリした気持ちになるかもしれませんよ。
上手くなくても描いたそれはオリジナルの作品です。私も下手ですが描くと気分が良く、何かを成しえた感じがして少し自信が持てたりします。そしてもっと上達したいと思い久しく見ていなかった描き方の本を引っ張り出してきて見たりしています。
自分なりのスケッチを1枚描けるようになるために、貴重な時間を少しだけ描きに割いて、新たな表現方法を身に着けられたらという思いで、スケッチングのための6つのステップを記述しています。是非参考になさってください。
そして、描くことに興味を持たれて、何か良い発見が得られたら素晴らしい事だと思います。
若い頃はファンタジックな物語が好きで、よく絵を描いていました。今も昔も変わらず、物語には必ずと言っていいほど魅力的なドラゴンが登場していました。
この絵を描いた時期をよく覚えていませんが、自分なりに想像した物語の場面を描いたのだと思います。
スケッチングの6つのステップ
スケッチブックと鉛筆、消しゴムを持ち歩く
いつもスケッチブックと鉛筆を身近に置いておきます。
自分好みのスケッチブックを準備しますが、一口にスケッチブックといってもいろんな種類があるので、お手頃で使いやすく描きやすいものを選ぶことをお勧めします。
マルマンさんのスケッチブックです。
使いやすくていつも愛用させていただいています。
私は B6 サイズのものを使っていますが、鞄に入れてとても使いやすいです。
日曜は仕事が休みなのですが悲しいかな中々忙しくてスケッチブックの出番がないので、平日昼休み時間に散歩したりして題材を探しています。
そして描くには何といっても鉛筆は基本です。一番馴染みのある画材であり、様々な表現を描き表すことが出来るのでこちらも描きやすく指に馴染む物を合わせて準備します。
鉛筆はダーウェントさん、ゼネラルさんのスケッチングペンシルを使っています。
消しゴムは練り消しゴムとTombowさんのラバー消しゴムで、どちらもとても使いやすいです。
私はHBと4Bの鉛筆を使っていて4Bの芯は直ぐに減ってしまいますが、芯が画用紙によく乗るのでいろんな描き方で様々な効果が期待できます。ご参考までに鉛筆の種類は以下の通りです。
・芯は固い物ほど薄くなり柔らかい物は太く濃く描け、HBを中心に番号が付いています。
・硬い 9H ← H ← F ← HB → B → 6B 軟らかい。
・硬い鉛筆は力加減に注意し、軟らかい鉛筆は減りが早いので鉛筆削りも常備しています。
普段通りの持ち方でも、寝かせてみたり立ててみたりしても大丈夫。自由に描いてみてその効果を覚えて次に生かしてみましょう。
次に修正するための消しゴムですが、普通のプラスチック製の物と練ゴムがあれば大丈夫です。
練ゴムはやっぱり消しくずが出ないのと、自由な形に分けて使えるので便利ですが、軟らかいので素早く消したり押し付けたりして使うので強めに描いた絵は完全には消せません。
しっかり消したいときはプラスチック製の消しゴムを使用します。
スケッチブックも鉛筆も実際に使い続けて画材の効果を体で覚えることが大切ですので興味深い物を見つけたり、頭の中にイメージが浮かんだときなどはどんどん何でもスケッチしてみましょう。
いつしか習慣になって、在るものだけではなくその場の雰囲気をもスケッチ出来るようになれば最高ですね! 自分もそうなりたい!!
題材を選ぶ(スマホやタブレットを活用)
道具を準備したら、描く対象を探しましょう。
興味深いと感じたものや、何よりも 自分が描きたいと思った物を選ぶ ことが大切です。妥協して選んだ対象では、描き途中で飽きてしまったり、疲れてしまう可能性があります。モチベーションを最後まで保つためにも、納得した題材を選ぶことをお勧めします。
家族や友人の似顔絵や偶然見つけた花や生き物、興味深い物など様々で思い出に残りそうな物を選び、素直に見たままを描くのもいいし、自由にイメージした抽象的な描きでもいいです。
また、私は昔からSFが大好きで、小説を読みながら想像を膨らませて、頭の中に浮かんだものを描いてみたりしていたので、ロボットや空想上の生物、未来の乗り物など実在しない物を考えて題材にする事が、時間がかかりますがとても楽しいです。
題材が決まったらスケッチブック内にダイレクトに配置するか、撮影することに問題が無ければスマートフォンやタブレットのカメラを使って後に描くため残しておくのも一つの方法です。
スケッチは実際に見ながら描く方が良いです。写真だと平面に映った物を描くため実物を見ながら描いた絵とは違ってきます。でも私は、自分の描きを楽しめるのであればどちらでも良いのではないかと思っています。
スケッチング題材の例
リラックスする
何かを描こうとする時は、リラックスした状態で始めたいものです。
コーヒーを飲んでお気に入りの音楽を聴いたりして、仕事などのストレスを一端外に置ける時間を作り、肩に力を入れず上手くなくても良いし今の自分が描けるものを描くつもりで。
描き始めると自分でも気づかないほど集中していると感じるときがあります。
それはおそらく題材をよく見ることで注意深く観察しているからだと思いますが、なぜか疲労感はあまり感じることは無く、時間の経過がとても速いので無理しない程度に休憩を挟んだ方が良いかもしれません。楽しい事は時間を忘れると言いますが充実した時間を過ごしているのだと思います。
ともあれたとえ短時間でもリラックスした状態を作って描きたいなと感じるまで待ち、少しづつ手を動かし始めましょう。スタートは無理なくそろそろ始めようかな位がいいと思います。
描き始める
実際に鉛筆で描き始めてみる。
実物はよく見て視線の動きが少ない位置で、イメージはよく考えて、どちらもうまく描けなくても補助線を引いて、リアルに描くことを意識して描くことで上達も早くなり、また描く人それぞれの表現する技術を自身の大切な財産にしていきましょう。
私は線を描く事が好きなので輪郭線を意識して描きます。
特に人物や動物などの題材の場合は全体像を輪郭線でイメージすることで動きのある構図を表現することに役立ちます。もしくは見るときに目を薄めにして全体を大まかな形でとらえてスケッチします。
イメージや発想によるスケッチは漠然としたものではあるけど、考えているうちに発想時の記憶が薄れてゆくので大まかでも早めにスケッチして、出来たら感じたことを言葉で記述しておいたほうが後々行き詰まった時の助けとなります。
理解できる何かに見えないだろうかと少しづつリアルな形に近づけて描き込んでいき、背景や風景、表情などを出来るだけ具体的に、また意味を持たせるストーリーを想像してみる。
想像することは決して難しくありません。今までの人生で見てきた様々な物語や強く興味を覚えた経験などを踏まえ自分のフィルターを通して想像してみましょう。
私の場合は好きな音楽を聴くことでイメージが出やすくなるので、音楽を聴くときは純粋に楽しむ傍ら、何か描けないかな等と絵の事も考えています。本当に音楽の力にはいつも敬服します。
実物でも想像でも出来上がりのイメージをしっかり持つようにしてそれに近づけるように描く事を心がけるようにしましょう。
形を意識して描き線にメリハリをつける
大分描けて来たら輪郭線を太くしたり細部の線は細くしたり、また、描いているときに新しく感じたイメージがあったら迷わず描き足して形にしてみましょう。
どんなものでも形が有り、その形もまた小さな形の組み合わせて出来ているので、意識して描く事で表現の助けになります。
大まかな形は残しておいて、その形を構成する細かな形を立体的に配置して描き込んでいきます。
描きたいものに決まりなんて無いのだから、肩の力を抜いて諦めず何度でも書き直してバランスがいいと思ったところで止める。
当然少し複雑になっていきますが、気にしないでどんどん進みます。筆が進むと描くのが楽しくなっていきます。もしストレスを感じたら筆を止めて明日また描きなおせばいい位の気持ちで。
明暗をつける
ここまでくれば、あとはリアリティを出すことに専念します。
明るい部分と暗い部分を描くには、実際に自分の目で確かめながら理解することが必要です。
日ごろから身の周りにある様々な物に光を当ててみて、明暗の部分をよく観察して練習がてら描いてみる事で影の位置や影による効果が理解できるのでお勧めします。
グレーの部分はティッシュペーパーで擦りながら濃淡を出して、明るい部分は消しゴムで、暗い部分は濃く描き入れていきます。
複雑な物やイメージした物は時間がかかりますが諦めずに取り組みましょう。
上手い下手は関係ありません。
何もしない状態からは確実に1歩も2歩も前進しています。
実際、私自身も描く度に学ぶ事の連続です。
描きの例
昔描いたイラストですが例としてご覧ください。
※デッサン用のモデル人形を見ながら描くと楽です
ギリシャ神話のケンタウロスの姿に感化されたイメージを描きたいので人体と馬の特徴をブロックの状態で合わせて全体の形にしてみます。
振り向く女性の姿を軸にしたかったので前足は人間のままにして輪郭線を流れるように描いていきます。
振り向く角度は大きくならないようにします。
今改めて見直してみると個々に違和感が有りますが、それなりに描きたかったものが出来上がっています。
今思えば胴体から後ろ足にかけて、改めて骨格を意識して描ければもっとリアル感が出たと思います。
細部の装飾は一つ一つ想像して描き加えていきましたが、この想像して描いては消しを繰り返しながら作り上げていく事もイラストを描く醍醐味のひとつです。
未熟な絵でしたが少しでも参考になれば幸いです。
まとめ
①いつもスケッチブックと鉛筆を身近に置いておく
・携帯できるサイズの画材を常備しておくと、気付いた時に直ぐに描くことが出来る。
・その時感じたことを文字にして記録しておく事で描くときの助けになる。
・鉛筆は使い易い濃度を選んでおく。軽く描ける濃い鉛筆と紙を傷めない練り消しがベスト。
②題材を選ぶ(スマホやタブレットを活用する)
・興味深い物や好きな物など、モチベーションを維持するために、描きたいと思うものを選ぶ。
・実物ではないイメージしたものを描くには、具体的な形に育てる事が大事。
・スマートフォンやタブレットなどを利用する。(撮影する時はマナーを守りましょう)
③描く前はリラックスした状態を作る
・自分にとって最適な描きが出来る環境(リラックスできる行動)に身を置く。
・焦らず、落ち着いた気持ちでこれから描く内容を順序だてて出来るだけ具体的にイメージする。
④描き始める
・実物を見ながら描くときは、視線の動きが最小限になる位置を選んで描き始める。
・動きのある題材は輪郭線で大まかに全体を捉えるように描く。
・イメージを描くときは強く思う部分と弱い部分を早めに配置して全体を描いておく。
・リアルな描きを求める場合は補助線を使い、各部の配置を正確に。
⑤形を意識して描き線にメリハリをつける
・題材を構成する形を立体的に分けて描くことで位置とバランスをとりながら描く。
・全体が描けたら薄いそれぞれの線にメリハリをつけて行く。
⑥明暗の部分をよく観察して描く
・ティッシュペーパーや練り消しゴムを活用しながら、影の部分と明るい部分を表現して行く。
・対象を薄目で見る事で明暗を確認する助けになる。
・日頃の生活の中で存在する物の光が当たる部分と影になる部分を意識して見る習慣をつける。
※時間がかかっても、無理せずゆっくりと自分のペースで諦めずに描き続ける事が大切です。
これからも自分の描き方で恐縮ですが、アナログでさまざまな鉛筆画を描いて行きたいと思っていますので、もし絵を描いてみようと思われている方が見られて少しでも参考になればとても嬉しいです。共感してもらえましたらまた見に来て下さい。
最後まで読んでいただきほんとうに有難うございました。